シリーズ
この美味しいには、
理由がある!
出雲の菜種油

菜種本来の色と風味、
無調合の一番搾りは昔と変わらない製法だから生まれます

植物由来の食用油のなかでもオレイン酸やリノール酸が豊富で、身体に良いのが菜種油。一般的に市販されているものは輸入キャノーラ種を溶剤抽出してつくられますが、本来の色や味わいを守ろうと国産純系種だけを使って昔と変わらない伝統製法にこだわる菜種油製油所が出雲市にあります。

出雲地方では江戸時代から盛んに菜種が栽培され、菜種油がつくられてきた歴史があります。とくに出雲国古志郷(現在の古志町、下古志町、芦渡町)は松江藩の菜種指定産地となり、つくられた菜種油は薬用ニンジンとともに特産品として大阪に送られて行灯など明かりの燃料として使われ、のちに搾油機の開発により食用として普及していきました。しかし時代が進むと行灯は電灯に代わり、輸入菜種の増大で国内の菜種栽培は激減。ここ出雲でも菜種を生産する農家は次第になくなり、菜種油を搾っていた油屋も次々と廃業に追い込まれました。かつては地区ごとに油屋があったといいますが、今では県内でただ一軒が残るのみ。その看板を守る狩野道雄さんに話を聞きました。「昔ここは豆腐屋で、油揚げをつくる菜種油を大社町荒木の油屋から調達していましたが、そこが廃業するということで搾油機を譲ってもらったのが70年前。それ以来近在の農家が持ち込んでくる菜種を油にすることを仕事にしました。今でも昔ながらの伝統製法を続けています」

そこには日本古来の菜種油の製造技術、希少な国産菜種を後世に継承するという強い思いがあります。

播種する種の選別は純系国産菜種を守るための大切な作業。およそ1ミリの粒を目視によって選り分けます。

スクリュー式の搾油機で圧力をかけて菜種をつぶし、油を搾り出していきます。

いずれも希少な国産菜種100%、昔ながらの圧搾製法での一番搾り。「きらりぼし」菜種油は生搾りが特徴です。

昔ながらの圧搾製法
純系種子を守り抜くための努力

現在、市販されている菜種油は生産効率をよくするために油の抽出や精製に溶剤や化学薬品を使います。そのため脱酸や脱色、脱臭をしなくてはなりませんが、ここでの伝統製法はまったく違います。菜種油づくりはまず菜種の水分を飛ばして油を搾りやすくするための焙煎から始まります。古式構造の炉に松の薪をくべ入れ、天気や湿度によって火力を加減しながら直径1.5mの平釜で焙ることおよそ30分。手で菜種の煎り具合の感触を確かめながらの作業です。煎りあがった菜種はそのままスクリュー式搾油機に入れられ、油が搾り出されます。次に湯洗いという工程で残った水分や不純物を3つのタンクに移し替えながら2週間かけて取り除き、最後は特殊な和紙を20層重ねた装置でろ過され、完全無添加の純粋な菜種油ができあがります。その品質は「菜種本来の黄金色と香りが際立っている」と評価され「本場の本物」認定(※1)を受けています。

菜種は容易に交配しやすく遺伝子が組み換わる心配があるため、ここでは他品種との交雑を防ぐよう製油所前のネットハウスで管理し栽培されています。

この製油所で使用する菜種は「ななしきぶ」「きらりぼし」の2種に限っています。ともに純系国産、遺伝子組み換えなし、エルシン酸を含んでいません。この原種育成者権の通常利用権を国の研究機関(※2)から受託し、他種と交雑しないよう隔離栽培し、風での自家受粉で種をつくり、それを県内外の契約農家で栽培・収穫してもらったものを全量買い上げて菜種油の原料としています。そこまでして昔ながらの伝統製法、純系の菜種にこだわる理由は何なのでしょうか。

「子どもたちが授業などで見学に来ますが、そこでは食べたもので自分の身体ができること、今は輸入された食品や原料が多いことなどを伝え食の大切さに気付いてもらい、安心・安全なものを求める人の健康志向に応えていきたい。あすの日のために、安全な菜種油を求める人の最後の拠り所としてこうしたやり方を守っていきます」と話していただきました。

影山製油所の代表 狩野道雄さんとメンバー

■取材協力
 有限会社影山製油所

(※1)一般社団法人食品産業センター
(※2)独立行政法人農業食品産業技術総合研究機構